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第5話  

聡は私を憎んでいるが、同時に少しばかりの罪悪感も抱いている。

あの夜、私たちは共に家族を失った。

私は聴覚を失い、言葉も話せない。そして、聡の母親が残した「星ちゃんは私が守る宝物だ」という言葉のおかげで、彼は私を見捨てなかった。

それどころか、兄としての義務を背負い、私を育ててくれた。

しかし、私はわかっていた。彼はそれでも私を憎んでいる。

何年経っても、彼は母親の命日になると酔いつぶれるまで酒を飲み、一人で母親を弔いに行く。

私は一度ついて行ったが、酔っ払った彼に蹴飛ばされた。

彼は私の首を絞め、凶悪な表情で言った。「夕星、お前なんか俺の母親の前で跪く資格がない!」

だが、彼が正気に戻ると、私を抱きしめ、首にできた痣を何度も撫でながら謝った。「星ちゃん、ごめん。俺はただ……どうしても葛藤してしまうんだ。」

彼が葛藤しているのはわかっていた。

彼は私と寝る時ですら、私の顔を隠していた。

実際のところ、私も葛藤していた。

彼を兄として、永遠にそばにいたいと願った。

でも、現実はそうはいかなかった。、二十年の時が経ち、私はどうしようもなく彼を愛してしまったのだ。

それでも私は知っている。

彼は決して私を愛さない。

結婚の約束すら、彼の慕っている女性への腎臓提供のための取引に過ぎなかったのだ。
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